下の写真は、「クマタカ物語」の中でキツネと対峙したシーンです。
(写真はクリック、またはタップすると大きくなります)
キツネに対して威嚇している姿。
体長70〜80センチ。羽を広げると140〜165センチにもなるので、すごい迫力です。(オスとメスで外見の差はありません)
あの春の日は、忘れられない1日となりました。
この鳥との出会いは「クマタカ物語」に書いた通りなのですが、実はその前にも数回、すごく遠い距離でそれらしき姿を見たことがありました。もっともあまりに遠くて、果たして本当にクマタカだったのか確信が持てない出会いばかりでしたが。
不思議なのですが、散歩で歩いている時に、遠い山の稜線などに小さな点が見えることがあって、その点が他の点よりぐっと視線を惹きつけるのです。
つまり、視線を惹きつけない点はヤドリギなどの植物で、惹きつける点は「何か」なのです。あくまでも私の場合ですが。
初めてクマタカらしき点を見つけた時も、フッと視線を持っていかれました。
川の土手の上から見て、川を挟んだ向こう岸の、さらに向こうの道路を挟んだ向こうの畑を超えたところの山の上の稜線に(ごちゃごちゃでスミマセン)、黒い点があって、双眼鏡で覗くと大きな鳥だったのです。
その時カラスが同じ木にとまるのが見え、大きさを比べることができました。オジロワシ? でもシルエットが違うような気がします。
その時はまだ私のカメラもなくて、夫が古い望遠レンズで撮ってくれた写真がこちら。(写真はクリックすると大きくなります)
はたしてクマタカだったのか?
その後も、クマタカらしき鳥が、オジロワシをモビング(追い払うための嫌がらせ攻撃)していたり、谷を渡って飛んでいったり。
いずれも遠いし動きが速くて、コンパクトカメラしか持っていなかった私には確認のしようもなかったのですが、あの川岸で初めて近距離を飛ぶクマタカを目にして、その力強さに感銘を受けました。
そんな出会いが「クマタカ物語」につながりました。
物語の中でも書きましたが、今回出会ったクマタカは、親離れしたばかりの若いクマタカでした。(名前がないと不便なので、しろちゃんと呼んでいました)
クマタカの子育ては長くて、巣立ってからも一年程は親と一緒に生活するそうです。
しかも卵は一個しか産まないので、ヒナは一羽だけ。
少なく産んで大切に育てるんですね。
しろちゃんのお父さんとお母さんが飛んでいるところにも出会えました!
(ちょっと見分けが難しくて、もしかして片方はしろちゃんかも?)
「クマタカ物語」について、本来ならクマタカが食事をしている場面に出会ったら、ストレスをかけないように離れるべきだと思っています。
今回、とても幸運なことに、私が居た場所にクマタカのほうから来てくれて、なおかつ私を全く無視してくれたおかげで、二時間にもわたってクマタカの食事や、キツネやオジロワシとのかけひきを観察することができました。
ですがやはり、こうしてクマタカのことを書いていると、どうしても環境問題についてお話ししなければならないと思います。
クマタカは絶滅危惧種です。
かれらが生きていくには豊かな森が必要です。
人が言うところの「自然がいっぱい」な、人が都合よく作り変えた自然ではなく、本当に豊かな森でなければ生きていけません。
山の尾根と谷が連続してあるような、そんな場所を好みます。
獲物とするのは、アオダイショウ(蛇)、タヌキ、ウサギ、エゾリスなど。
入り組んだ森の中でどのように狩りをしているのか、その大きな翼をどのように使っているのか。よくわかっていないことも多いのだとか。
また、食物連鎖の頂点にいる彼らは、環境を知るうえでとても重要な生き物です。
彼らが生きていけないということは、他の生き物にとっても深刻な状態ということになるからです。
逆を言えば、彼らが生きる環境を守ることは、食物連鎖の下にいる多くの生き物たちを守ることにもつながるのです。
実は、しろちゃんとお父さん、お母さんがいた山も、反対側は採石場で、今もどんどん山が削られているのです。
建物を建てるため、街を作るため、必要なことかもしれませんが、一番の問題は、この場所に限らず、そうした暮らしに直結している裏側のことに対して、あまりに知らない、無関心である方が多いことではないでしょうか。
私の自戒も含めての物言いなのですが。
スマホのレアメタルなどもそうですね。いろいろな採掘現場で何がおきているのか。
自分たちが暮らすために、なにが消えていっているのか。誰を苦しめているのかを知らないと、いずれは全て自分たちに跳ね返ってくると思います。
それは本当に恐ろしいことです。
私は本当に小さな存在で、しろちゃんたちのためにできることは、このサイトを見てくださった方に伝えることぐらいなのですが、なんとか良い方向に向かっていけたらと願わずにはいられません。
そしてもう一つ、とても心配していることがあります。
狩猟で使う鉛玉の問題です。
農業被害を減らすためなどの理由で、年間10万頭ものエゾシカが駆除されています。
この数を聞くと驚かれる方もいますが本当です。
ヒグマは年間800頭ほどが殺されます。
こちらも間違いじゃないかと言われますが本当です。
観光のイメージキャラクターなどにされていますが、厳しい現実があるのです。
そのことに関しては、別のページ「守るために思うこと」で書こうと思います。
大切な作物や、果樹の樹皮を食べられてしまった農家の方の苦悩には心が痛むし、実際に現場も見ています。
そしてハンターの方々を責めているのでもありません。
駆除に携わるほとんどのハンターの方は、使命感と高い志を持って銃を握っているのだと思います。
どんな世界でもそうですが、一部のハンターの方が、知識や意識の不十分から鉛玉を使うのでしょう。
そして狩猟に鉛玉が使用されることで、その死骸を食べたワシやタカなど、また小石と間違えて飲み込む水鳥が、鉛中毒を起こして死んでいるのです。
その症状は激しく、凄まじい苦しみをもたらし、やせ衰え、運動麻痺を起こして死んでいきます。
現在、北海道では鉛玉の使用が禁止されているのですが、本州では使用可能であるため、持ち込まれたものが使われているのが現状だそうです。
動物たちの中毒死はもちろん、そんな毒物がばらまかれているなんてとんでもないことだと思います。
そしてウクライナの戦争です。
今、弾が手に入りにくい状況になっているのだとか。
そうなると、また鉛玉が使用されるのではないかと気が気ではありません。
どうかそんなものが使用されることがないように。
また、戦争が1日でも早く終わるように。
子を持つ親として、ウクライナの子供達の笑顔と、命に優しい世界を願ってやみません。
追記
その後のクマタカとの出会いも書いています!!
2023年 3月の記録 をご覧ください。
下の写真は、そこにのせた写真の一部です。