初めて会った時、なんて愉快な鳥だろうと思ったことを覚えています。
その時私は、ある場所の木道を歩いていました。すると目の前の木の杭にヒョッコリと小さな鳥がとまりました。ミソサザイだ!!と思った時には、笹薮に姿を消しました。
ところがその後、歩く木道の先に先に、ヒョッコリヒョッコリとその鳥が出てくるのです。木道の下を通って先回りしているのか、右に左に忍者のような登場の仕方です。まるでこっちだよと道案内をされているみたい。
すっかり楽しくなった私は、以来ミソサザイの大ファンです。
(写真はクリック、またはタップをすると大きくなります)
体長は11センチととても小さいですが、好奇心旺盛な行動もあって、アイヌの神話では、悪神と戦う小さな英雄として語られています。
一見地味な羽の色も、よく見るときれいな縞模様があります。(オスとメスの外見は同じ)
食べ物は主に昆虫類。
さえずり(求愛などの歌)がとても美しく、またよく響きます。まさに春の歌ですね。
笹薮の中をすばやく動き回り、出てきたと思ったらいなくなる姿はなかなかカメラで捉えるのが難しく、出会いの機会が多い割には写真の少ない鳥でもあります。
さらに雪の季節に出会うことも多いので、真っ白い雪が背景にあると茶色い体が真っ黒に写ってしまうので露出補正が必要です。そうでないとこんな写真ばかりになります。笑
尾をピンと立てたスタイルをよくするので、こんな写真でもすぐにミソサザイだとわかりますね。
これは失敗写真ですが、思い出深い写真でもあります。
この写真を撮ったのは、私がヤマセミのかなちゃんを見ている時だったのです。
私がかなちゃんを見てじっとしていると、その周りをミソサザイが行ったり来たり。切り株の隙間に入っていったかと思ったら、いつの間に出たのか全然別の方角から飛んできたり、枝に飛び上がってから水辺に飛んでいったり。チャッチャッという声と忙しない動きが見ていて飽きなくて、厳冬期の刺すような寒さの中なのに楽しくてしょうがない時間でした。
そんな素早い動きの彼らですが、やはり捕食されることがあります。
ある朝、いつもの道を歩いていると、一面に鳥の羽が散乱していました。縞模様の小さな羽はミソサザイのもの。よくみると片翼がそのまま落ちていました。
状況から見て捕食者はおそらくハイタカ。小鳥を専門に狙う小型のタカで、ヒヨドリやツグミを襲う姿は見たことがあるのですが、笹薮を潜行する小さな獲物を捕らえる技には感心してしまします。
(かわいそうではありますが、これは自然の摂理ですね)
ミソサザイの巣ですが、これもとても興味深いものです。
春、オスは苔を使ってたくさんの巣をこしらえます。これは「求愛巣」と呼ばれるもので、中は未完成です。
それからオスは、結婚したいメスをそれらの巣に案内します。たくさんの巣の中にメスが気に入った巣があれば、カップルが成立!!
メスはその気に入った巣に自ら巣材を運び込み、巣を完成させて卵を生みます。
鳥の求愛方法は、美しい羽だったり声だったりしますが、ミソサザイはなかなかに現実的な方法で相手を選ぶのですね。