シマエナガ

ここ数年のシマエナガブームがすごいですね。
かわいい雑貨から、道民共済のキャラクターまで色々なところに登場しているし、カメラを持って歩いていると、かなりの頻度で「シマエナガいますか?」と聞かれます。
(写真はクリック、またはタップすると大きくなります)

実際に見たことがある人はそんなにいないようですが、実は民家の庭先にも現れるし、住宅街の上を群れが飛んでいることもあります。
公園の木立から賑やかな声が聞こえてくることも。
体長14センチですが、尾が長いので、本体部分だけをみると本当に小さいですね。
体重にいたっては、8gしかありません。
オス、メスの外見上の違いはありませんが、抱卵期のみ見分けることができます。(後で詳しく書きます)
大人は目の周りに黄色いアイシャドーが入っていて、幼鳥にはピンクのアイリングがついています。デザインにも意味があるのでしょうが、人間が見てかわいいと思う要素をたくさん持った鳥ですね。

シマエナガに会いたい!!と思うなら、季節はだんぜん秋がおすすめ。寒くても平気なら冬も高確率で会えます。
理由はこの時期、シマエナガは群れになり、とても賑やかに木から木へ移動していくので目立つのです。
また「混群」といって、シジュウカラやヤマガラなど、別種の鳥たちと大きな群れを作っていることもあります。
(大抵、シマエナガが群れの先頭を飛んでくることが多い)
賑やかな小鳥の声が聞こえてきたら、耳を澄ませてください。フィフィフィフィージュリリリジュリリリと聞こえます。鳴き声さえ知っていればすぐに気づくはずです。
そして寒い時期こそ、「雪の妖精」と言われるフワフワした姿になるのです。

逆に春と夏はどうかというと、まず春は、大切な子育ての時期なのでシマエナガはとても神経質になっています。この時期はなるべくそっとしておいてあげたほうがいいのです。(毎年、3月には巣作りが始まります)

別ページでも書きますが、子育てのための巣作りの途中で、せっかく作った巣を放棄してしまう営巣放棄が増えています。人気が出たことの弊害ですね。
巣作りしている時は、人が80メートル圏内に入っただけで警戒し、落ち着かなくなります。
特に巣材運び後半になると、50m以内に接近しただけでヒナを育てるには危険と判断して、容易に営巣放棄してしまう例が多いです。
これは、親鳥がなんとか無事にヒナを育てたいという気持ちの表れ。
かわいいからと追い回すようなことは、この時期絶対に避けなければならないのです。
巣は作り直すことができますが、小さな小鳥にとっては大きな負担になります。

そしてこの時期から、その姿もフワフワではなくなります。
特にメスは、卵を温めるためにお腹の毛がどんどん抜けていくのです。
子育中は毛も灰色になり、それこそボロボロの姿になっていきます。

巣の材料集めから始まる子育ては非常に厳しいもので、天敵のハイタカ、オオタカ、カラスなどに常に狙われており、巣が10個あっても、無事にヒナが巣立てるのは2個あるかないかです。
子育てを見たいという方もいますが、人間が巣にカメラや双眼鏡を向けることで、天敵に巣の場所を教えてしまうことがよくあるので、本当に気をつけなければなりません。
どうしてもの場合は、最低でも20メートル以上は距離をとり、なおかつ身を隠す必要があります。そして短時間で離れること。
一度、テレビの撮影現場を見ましたが、ブラインドテント(撮影用のカモフラージュされたテント)をはって中からレンズの先端だけをだして撮影したり、見張りを立ててカラスなどの天敵に警戒しながら撮影を進めていました。

間違っても堂々と立ってカメラを向けたり、三脚や椅子を置いて居座ることはやめなければなりません。多くの場合、シマエナガを死なせてしまうことになるからです。

天敵も生き物です。自然の摂理で命を落とすのは当然あることですが、人間のせいで襲われた巣を見るのは心が痛いです。(今、そういったことが本当に増えています)
私もつがいの様子から巣のある場所はだいたいわかるのですが、あえて巣は探さずに、エサを運ぶ親鳥の様子を見たり、運が良ければ巣立ったヒナたちに会えるのを楽しみに待つことにしています。
(保護のために、あえて巣そのものの写真は載せないことにしました。すみません。そのかわり下に巣材集めの様子の写真をのせました。蛾の繭糸を引っ張る姿や羽を運ぶ姿をぜひご覧ください。)

上の写真は、巣の材料を集めだした頃。コケをくわえているのがわかりますか?
巣は、コケや地衣類をクモの糸や蛾の繭糸で縫い付けてボール状にします。なんと防水加工も完璧な優れものです。

下の写真は、蛾の繭玉から糸をとっているところ。
夫婦で代わる代わる糸を採取しているけれど、なかなか糸が切れなくて一生懸命に引っ張って、ついにはぶら下がっている姿がかわいかったです。

巣の中には鳥の羽などフワフワしたものを敷き詰め、その上に卵を産むのです。鳥の羽はなんと千枚以上、二千枚近く集めるのだとか。
下の写真は羽を運んでいるところ。
他の鳥の抜け落ちた羽や、タカなどに襲われて飛び散った羽を見つけて運ぶのです。

それから卵を温めはじめるのですが、この時、メスは巣にこもりっぱなしになるため、尾羽がまがってしまうことがあります。
いつもはオスメスの区別がつかないシマエナガですが、この時だけはわかります。お母さんががんばっている証拠なんですね。
オスはオスで、メスのためにせっせとエサを運びます。夫婦で役割分担しながら卵を守るのです。

ヒナたちが生まれてからはさらに大変!!
ひっきりなしにエサをとって運び、天敵を警戒しながらお世話します。
この時期の親は本当にボロボロに見えます。がんばってー!!と応援したくなりますね。
実は、シマエナガには応援の鳥がいるのです。ヘルパーといいます。
それは、つがいの相手を見つけられなかったオスだったり、前の年に生まれたばかりで未熟な子だったりするようですが、つがいのお手伝いをしてヒナにエサを運んだり、巣立ったばかりのヒナがどこかへいってしまわないように誘導したりするのです。おもしろいですね。
(特に巣立ち直前の数日は、3〜4羽のヘルパーがつくことも。成長が遅れている子に集中的に餌を食べさせ、巣立ちに間に合うように協力するそうです)

そしていよいよ巣立ちを迎えます。(5月上旬から6月にかけて)
シマエナガの巣立ちは、まず巣から出て近くの枝に横一列に並び、30分ほどしてから親やヘルパーさんに連れられて飛び立っていくのです。
この横一列に並ぶ姿がおだんごのようなので、「ヒナだんご」といわれます。ヒナだんごは巣立ちから2〜3日限定で見られます。
その後は家族で高い山のほうに移動するので、夏の間はあまり姿を見かけなくなります。
巣立ってもしばらくはエサをもらいながら成長し、徐々に自分でもエサをとる術をみにつけます。
はじめは黒いもようのある顔も、秋が近づくにつれて白くなり、よく見る雪の妖精の姿となるころには一人前のシマエナガになるのです。
そして群れとなって山を降りてきます。

よくきかれることの一つに、シマエナガの食べ物があります。
これは、ずばり虫です。
クモだったりカイガラムシだったり。他にはカエデの樹液なども大好きです。ツララになった樹液をなめる写真をご覧になった方も多いと思います。
下の写真は、小さな虫を食べているところ。最後はごっくんした後。

一つだけ木の実で食べることが確認されているものが、ニシキギの実。
私は食べているところを見たことがないのですが、庭にあるので観察してみようと思います。(時折、我が家の庭に来るのはそのせい??)

シマエナガの思い出で一番印象に残っているのは、冬の川岸で群れに囲まれたこと。
その日、川岸を散歩していると、川の貴公子ヤマセミが飛んできました。
うれしくて、低い木の茂みにしゃがみ込んで隠れ、じっとしていると、背後からにぎやかな声が!!
またたくまに私は、シマエナガの群れに囲まれてしまいました。
ひたすら息を殺していると、目の前でピョンピョンピョンピョンあちらこちらせわしなく動くシマエナガたち。
細い枝にぶら下がったり、背後から手前にとびだしてきたり、フィーフィーフィージュリジュリとそれはそれは楽しい時間でした。
そして目の前にはヤマセミが!!
こちらに気づいているのかいないのか、尾羽をゆっくり上下させながらじっとしています。
カメラを持ってはいましたが、シャッター音をさせたらどちらも驚かせてしまうでしょう。
この時間を壊してしまうのがもったいなくて、写真を撮らずに冬景色のなかの暖かい時間を堪能したのでした。

→「守るために思うこと」の「かわいいの犠牲にしないために」のページにも、シマエナガについて書いてあります。内容が重複しているところもありますが、読んでみてください。

その後に撮った写真集