クマゲラ

上の写真はクマゲラのメス。
このメスは、つがいのオスより強そうで、力強く木を掘る姿がかっこよく、親しみをこめて「奥さん」と呼んでいました。

日本で一番大きなキツツキであるクマゲラ。体長は46センチもあります。
(オスは紅いベレー帽をかぶったような姿。メスは後頭部のみ紅です)
そして私が思うに、日本で一番にぎやかなキツツキでもあります。

散歩をしていると、山から下りてくるクマゲラに出会うことがありますが、キュロキュロキュロキュロキュロ・・・と、山からずっと大きな声をだして飛んできて、木にとまるとキョーンキョーンキョーン!!とアピール。
はて、野生動物としてそんなに目立っていいのだろうか。敵に見つかって食べられたらどうするのかと、余計な心配をしてしまいます。

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クマゲラとの出会いは、いつもこんな風に始まります。
とりあえず鳴き声を聞いていただけたらと。

おもしろいのは、とまっていた木から次の木に飛び移る、ほんの2〜3メートルの間も黙っていられないこと。
いちいち声をだして、賑やかに森を渡っていきます。
(もちろん個体差もあって、静かな子もいますけどね)
そんなクマゲラが繁殖期に入ると、これまた大きなドラミング(縄張りの宣言や求愛のために木をつついて音をだす行動)が聞こえてきます。
その音はまるで機械で穴を掘っているような豪快なものです。

そして、あまり人を怖がることもありません。
驚かせるような行動や、プレッシャーを与えるようなことをしない限り、こちらを気にしたそぶりもせず、逆にすぐ近くに飛んできて餌を探しはじめ、こちらがビックリすることがあります。
クマゲラから見たカメラマンは「いつもボーッと立っている暇な動物」くらいの認識なのかもしれませんね。

ただし、巣やねぐらのある場所は全くの別問題です。
クマゲラにとってとても大切な場所。大切な時間。
毎年、カメラを持った人がクマゲラの巣の前に居座ったり(椅子を持ってきて座っている人も)、巣の下をうろうろしたり、近距離でカメラを並べて待ち構えるようなことをしてしまい、営巣放棄してしまう例が後を絶ちません。
巣から顔を出したヒナは本当にかわいいですが、その成長を阻んでしまっては、なんのための写真なのかわからないのではないでしょうか?
暖かい配慮を持って見守ることが大切だと思います。
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さて、メスの「奥さん」に対して、こちらはオスの「エンジェルくん」と「レッドくん」です。
二羽とも羽の色が真っ黒ではなく、エンジェルくんは天使のような白い羽が両足や腹、首回りから後頭部にかけて混ざり、レッドくんは主に風切羽に赤茶色が混じっています。
なんと同じ地域に紅白のクマゲラが現れるという、興味深いことが起きました。
ちなみにエンジェルくんは、「奥さん」とペアだったようなのですが、離婚したのか、途中から一緒にいる姿を見かけなくなりました。

この三羽はそれぞれ個性が強くて、会うたびに色々なエピソードがありました。

まずはエンジェルくん。
散歩に出て歩いていると、なんというか、普通に「いる」エンジェルくん。
その日も、あまりに自然に道の横の木(しかも目の高さ)にとまっていたので、思わずご近所さんにあいさつするように、おはようと言ってしまいました。
一心不乱に半分枯れかけている木を掘っていて、チラリとこちらを見た後は無視。
アリを食べていたのでしょう。時々長い舌を出してレロレロしています。
そして、うれしそうに取り出したのは、大きないもむし!!

味わっているのでしょうか、口に入れたり出したりを繰り返してから、ようやくゴックン!
面白かったのはその後です。
おなかがいっぱいになったのでしょう、木を離れて別の木に飛び移りました。
その木には、山ブドウの蔓が巻きついていて、ブドウがたくさんなっていたのですが、おもむろにそのブドウを食べ始めたのです。(逆光だったので写真が真っ黒になりました・・・)
もしかしてデザート??
そして満足すると、隣の木に移って丸くなってじい〜っと動かなくなりました。
お昼寝?? カラスが来た時だけ、目玉をキョロキョロ動かしていました。

クマゲラは、その動きも表情もひょうきんに見えてしまい、見ていて楽しいのですが、エンジェルくんは特にそんな感じで目が離せませんでした。

ところが、冬を越えて春が近づいた時に会ったエンジェルくんは、なんだか羽が貧相になり、声もかすれていて心配になりました。
もしかしたら繁殖期にはいり、オス同士の争いに負けてしまったのかもしれません。それ以来、私も仕事が忙しくなって会っていないので、無事を祈るばかりです。

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声がかすれていたエンジェルくん。大丈夫かな?

次はレッドくん。
レッドくんは、声にあまり迫力がありません。そのぶんを補うようにたくさん鳴きます。それで、レッドくんの声だけは聞き分けができました。
以前、野鳥友達Hさんから、ここから4キロほど離れたところで羽が赤いクマゲラが繁殖したと聞いたことがあって、その個体が移動してきたのかもしれないと思っています。もしくはその子供でしょうか。

忘れられないのは、レッドくんがキツネに食べられそうになったことです。
その時は散歩の帰り道で、木の根元近くにいたレッドくんに会いました。
アリを食べているのでしょう。低い場所にいたので、私も気がつかなくてだいぶ接近していました。
レッドくんが気にする様子もないので、そのまま静かに見ていたのですが、ふと横を見ると、いつの間に来たのかキツネがいるではありませんか!
しかも、明らかにレッドくんを狙って忍び寄っている!!
え?! どうしよう!!
声を出してレッドくんを助けるべき??
いや、キツネだってお腹をすかせているでしょう。人間が手を出すのは間違っている??
いや、でもクマゲラは絶滅が心配されている鳥だし!!
いやしかし・・・と葛藤しているうちにどんどん近づくキツネ!!
とりあえず写真を撮ろうとカメラを構えたところ、なんということでしょう!! 近すぎて撮れない!!
私のカメラのレンズは単焦点の望遠レンズのため、近くのものはどアップでしか写せないのです。
こりゃダメだ!!と早々に諦めて、再びキツネを見た時に気がつきました。

キツネが疥癬にかかっていることを。

それで、一気に頭が冷えました。
別のページに書きますが、ヒゼンダニによる感染症で、ひどい痒みを伴い、尻尾から全身に広がって毛が抜け、衰弱して死んでしまう病気です。
人間が餌付けをすることで内臓が弱り(調味料や添加物を含むため)、発症しやすくなります。
今、非常に多くのキタキツネが苦しんでいるのです。
この子も、遅くとも秋には死んでしまうでしょう。

泣きそうな気分で成り行きを見ていると、ヒョイ、とレッドくんが振り向きました。
キツネとの距離は1メートルもありません。
しばしにらみ合う二匹。
すると、レッドくんがヒョイヒョイヒョイヒョイと木を登りはじめました。
えっ?飛んで逃げないの? と思いましたが、キツネも見送っている?!
安全な高さまでくると、そのまま木をつつき始めたレッドくん。
もしかしたら、飛んで逃げると反射的に飛びつかれてかえって危険なのかもしれませんね。
キツネはしばらくレッドくんを見上げていましたが、私の前を横切って去って行きました。
美味しくなさそうだったのかな?

そして、メスの奥さんです。

この子は三羽の中で一番大胆かもしれません。見ているとすぐそばに飛んでくることがあるのです。
ですが一度、驚かせてしまったことがあります。
散歩の帰り道に、奥さんがあちらの木、こちらの木と飛び移りながら餌を探しているところに出会いました。
その日、歯医者の予約をしていた私は、残念ながらすぐに帰らないといけなくて、そのまま道を進んだのです。
私が一本の木に近づいたのと、奥さんがその木に飛び移ったのは同時でした。
ヒョイ、と奥さんが幹から顔をだして、私と超至近距離で顔を合わせてしまったのです。
お互いビックリした一瞬の間の後、表現できませんが、とんでもない声をあげて奥さんが飛んで行きました。
心配しましたが、数日後にいつもどうりの奥さんに会えてホッとしたのでした。

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奥さんが力強く木を掘ってアリを食べています。
手前に雪があって見づらいかもしれません。

上の動画のように、まるでのみで削るように木の皮を剥ぎながら穴を空けていきます。削った跡は、本当に大工道具を使ったみたい。
クマゲラの食痕(虫を取り出すために開けた穴)は特徴的で、縦に長く穴を掘るので、アイヌの神話では舟を掘る神様と呼ばれます。
小さな穴を掘っても四角い形になるのは、くちばしの形が関係しているのでしょうか。
紹介した三羽が空けた、芸術的な食痕の写真も載せておきます。

ちなみに6月から7月にかけては、幼鳥(ヒナ)が巣立ちます。
その時、成鳥(大人)と幼鳥(ヒナ)の見分けができると楽しいですよ!! 

成鳥は目の虹彩が黄色がかった白。幼鳥は黒っぽい色をしています。
どっちかな??と思ったら見てみてください。

彼らに会える森が、なくなりませんように。 

追記

それなりに出会う機会があるクマゲラですが、印象的な出会いのみ書き足していこうと思います。

2023年に出会ったクマゲラ

詳しくは、2023年 2月の記録5月の記録11月の記録 を見てください。

2024年に出会ったクマゲラ

詳しくは、2024年 1月の記録 をごらんください。

詳しくは、2024年 3月の記録 をご覧ください。

その後も出会いはつづいていますが、余裕のある時に更新します。